最近は、コロナウィルスで都市が「ロックアウト」されることがありますが、不動産の世界でもロックアウトがあります。例えば、借家の賃借人が勤務先の倒産などで収入が無くなり、家賃を何ヶ月も滞納すると、賃貸人が「ロックアウト」をすることがあります。例えば、借家の鍵を変えるなどして、強制的に借家から退去させようとします。

不動産の業界用語であるロックアウトの実施

借家の賃借は、賃貸人と賃借人の間で契約を結んだということです。賃借人に債務不履行があれば、賃貸人は違反の是正を催告した上で契約を解除することができます。

ただし、賃貸借契約のような継続的な利用を前提にした契約の場合は、滞納という債務不履行があったとしても、すぐに契約を解除できるわけではありません。賃貸借契約は契約当事者間の「信頼関係」を基本としており、当事者間の信頼関係が破綻していない限りは契約解除が認められません。これを「信頼関係破壊の法理」と呼んでいます。

裁判所の判例でも、「およそ、賃貸借は当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるから、賃貸借の継続中に当事者の一方にその信頼関係を裏切つて、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあつた場合には、相手方は賃貸借を将来に向つて解除することができる』とされています。

住居というのは、人が生活していく上で必要不可欠なものであり、その居住する権利を一方的に奪ったり、侵害したりする行為は認められないというのが裁判所の判断です。

不動産の業界用語であるロックアウトと信頼関係の破綻

賃借人が家賃を何ヶ月滞納すれば契約が解除できるのかという、期間に対する規定は法律にはありません。あくまでも一般論としては、滞納の期間が3ヶ月を越えると、信頼関係の破綻が生じていると判断されます。ただし、あくまでも判断基準であって、債務不履行の要因次第では3ヶ月の滞納でも契約解除を認められないケースがあります。

なお、賃貸借契約書にロックアウトを可能とするような特記事項が設けられていたとしても、無効です。例えば、「家賃を滞納した時点で、賃貸人は退去処置を採れる」とか、「賃料の支払いを2ヶ月怠った時は、契約は解除される」などがあったとします。このような「無催告解除特約」が付帯された賃貸借契約書に賃借人がサインしたとしても、信頼関係破壊の法理が基本であることに変わりはありません。

不動産の業界用語であるロックアウトの違法性

賃借人が家賃を滞納したからといって、賃貸人がロックアウトをして強制的に賃借人を退去させることはできません。裁判所からの退去命令を得ない限り、賃貸人には何らの権限もありません。

つまり、個人が勝手に法的行為を行うことは「自力救済禁止の原則」に反するからです。法的行為は全て法律によって行うのが法治国家の大前提です。仮に、賃貸人がロックアウトをすると以下の罪を問われます。
1)住居侵入罪:賃借人の承諾もなくマスターキーで借家の中に入ったり、鍵を変えたりする。
2)不退去罪:借家から出ていくように、賃借人が求めているのに借家に居座る。
3)脅迫罪または強要罪:借家から退去するように大声をあげて脅かす。
4)器物損壊罪:借家の中の物を運び出したり、壊したりする。
5)暴行罪または傷害罪:賃借人を無理やり追い出そうとする。

賃借人が一方的に家賃を支払わない場合は、裁判所に「督促」の申立てをするなり、訴訟を起こすなりすべきです。正式な法的処置によって契約解除が可能になります。法的な手段を採ることが最善の道です。

まとめ

賃貸借契約は賃貸人と賃借人の信頼関係で結ばれています。信頼関係が破綻しない限り、契約の解除はできません。また、ロックアウトのような自力救済行為は法律違反です。