不動産というのは、メーカーが工場で作る製品とは違って一つ一つが異なった性質を有しており、当然定価というものがありません。従って、不動産を売買したり賃貸したりする時には、当該不動産の価値を正しく評価することが必要になります。その評価を決定するのが、「不動産鑑定士」です。不動産の鑑定評価は国家資格保有者である不動産鑑定士にしかできない「独占業務」となっています。

●不動産鑑定士の業務内容と役割

不動産を鑑定する時は、対象となる土地や家屋の公的情報(登記情報、固定資産評価など)や関係法令情報などを収集したり、収益見込みを算出したりします。また、近接地域の取引額の確認や現地調査、聞込みなども行います。それらの情報を総合的に解析し、評価内容を具体的に説明した文章を添えて、「不動産鑑定評価書」を作成します。

 

不動産鑑定評価書における評価が公的価格の指針となったり、融資の際の担保評価に利用されたりするため、影響力が非常に大きくなります。また、不動産鑑定評価書は不動産に公正な評価を与えることで、不動産価格が過度に高騰したり暴落したりしないように調整を図る役割も担っています。

 

さらに、不動産鑑定士の評価が適正価格となり、相続税や固定資産税に関するトラブルを未然に防止することに繋がっています。不動産は金額が大きいため、当然税金も高額になります。納税者が他の不動産の税額と比べて異議を申し立てた時に、税金の算出根拠が不明であったり、公正でなかったりすれば、租税体系が崩壊します。

 

従って、多くの情報を収集し、不動産の適正価格を算出する不動産鑑定士の業務は、将来のトラブルを未然に防止することにも役立っています。

 

ちなみに、不動産のオーナーに対して、地域の経済環境やニーズに即した不動産の活用方法を提案することも不動産鑑定士の重要な業務の一部になります。また、不動産投資を検討している人に対して、投資の可否を判断する材料となる不動産鑑定評価を作成し、効果的にコンサルティングすることも不動産鑑定士の業務です。

 

●不動産鑑定士の1日の業務の流れ

不動産鑑定の依頼があった場合、1日の作業は一般的に以下の流れになります。

1)朝の内に、クライアントとメールなどで業務遂行の確認をします。

2)午前中に現地調査に向かい、不動産に関する必要情報を入手します。

3)現地調査の結果に即し、午後から法務局や役所等を回り、登記情報などを収集します。

4)夕方からはデスクワークになります。デスクワークではデータの解析や報告書の作成などを行います。最終的に不動産鑑定評価報告書を完成させます。

 

●不動産鑑定士の資格の取得

不動産鑑定士になるには、国家試験に合格することが前提です。国家試験には年齢、学歴といった制限が一切なく、誰でも受験することができます。従って、仕事をしながら資格を取得することも可能です。ただし、取得すべき知識は不動産に関する行政法規、不動産の鑑定評価に関する考察、さらに民法、経済学、会計学と広範囲になっています。不動産鑑定士試験の合格に必要な勉強時間は一般的に2,500~4,000時間と言われており、日々時間を割いて根気強く勉強を続ける必要があります。

 

不動産鑑定士は国家資格として難易度の高い部類に属しており、試験の合格率は短答式が30%前後、論文式は15%前後になっています。ただ、ここ数年は不動産鑑定士試験での合格率が上昇傾向にあります。不動産鑑定士の増員が社会的に求められていることが伸びに繋がっているとも言えます。

 

●まとめ

不動産鑑定士の数は一時期減少していましたが、近年になって増加しています。不動産鑑定士の仕事は単調になりがちという性質がありましたが、仕事内容が年々変化しており、活躍の場が広がってきています。