不動産を売却する時は一般的に、不動産業者と媒介契約を結んで買主を探してもらいます。一方、売主個人が直接買主と売買契約を結ぶ時がありますが、その際に売主が何らかの事情で、第三者に売買契約の締結を委任することがあります。それを「代理契約」言い、売主に変わって契約を結ぶ人を「代理人」と言います。通常、代理契約では、売主は代理人に対し委任状を作成します。

●不動産の代理契約の効力

代理人が売主のために行う意思表示や受取る意思表示は、代理人ではなく売主に効力が及びます。その規定が民法第99条です。
『代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。』

ただし、「本人のためにすることを示してした」ものでないと、売主ではなく代理人に意思表示の効果が帰属します。それが、100条の規定です。
『代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。』
つまり、相手側が売主のためにしている行為と想定できる場合は、代理人ではなく売主に効力が及びます。

●不動産の代理契約の要件

代理契約における法的効力を理解していないと、揉め事の原因になります。例えば、「頼んでもいないことを勝手に決めた」や「契約内容とは違う」などが起きます。原則として、売買契約は所有権者本人でなければできません。しかし、一定の条件を満たした代理人であれば、所有権者に代わって契約を交わすことができます。

一定の条件とは、以下のことです。
・本人から代理権を与えられている。
・委任された者が「代理人になる」と意思表示をする。
・決められた範囲内の行動である。

●不動産の代理契約の遂行における瑕疵

代理人のした行為に以下のようなことの起きる場合があります。

1)詐欺の被害
売主は売買契約を代理人に委任しますが、代理人は買主に騙されて二束三文の値段で契約してしまいました。この場合、売主も代理人も詐欺に対して善意無過失であれば(何も知らず、且つ騙されたことに気付けない状態)、売主は契約を取り消すことができます(民法96条)。

2)代理人の横領
売主は所有する不動産を買主に売却する約束をしました。売主は友人に売却の代理契約を結びます。代理人は約束通りの価格で売買契約を結びますが、代金を横領しました。このケースでは、売主の友人は代理権を与えられているため、「無権代理人」ではありません。要は、売却代金を横領しただけです。また、買主も代理権を与えられた代理人と売買契約を結んだことに、何の過失もありません。

このケースは民法93条の規定が該当します。
『意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。』

代理人が代金を横領することを買主が知っていた時は、売主は契約を無効にできますが、そうでない場合は、売主は不動産を買主に渡さざるを得ません。売主は友人である代理人に損害賠償を請求するしかありません。

●不動産の代理契約における委任状の作成

代理契約を結ぶ時は、代理人に与える権限の範囲を明確にするため、委任状に以下などの事項を記載します。

・不動産の売却を委任する旨
・売買価額
・手付金額
・手付金解除期限
・違約金の額
・引渡し日
委任状には委任者と受任者(代理人)が署名・捺印します。

●まとめ

不動産は非常に高額な売買契約になるため、代理を依頼する場合は絶対的に信頼のおける人を選定するのが必須です。なお、買主に対しても委任の内容を事前に連絡しておくことが、誤解を生じさせないために必要です。