マイホームである戸建住宅を売却する人がよくいますが、当然売却価格は状況によって千差万別です。例えば、購入した時は簡素な町だったのに、その後電車の駅ができたり、近隣が再開発されたりしたことで、住宅の売却時に高額な利益を得られることがあります。

住宅を売却して利益が得られれば、その利益に対して所得税が課されます。ところが、条件を満たしていると、所得税における優遇措置が適用されます。それが、「3,000万円特別控除」と「買換え特例」です。ただし、2つの制度を同時に利用することはできないため、どちらか有利な方を選択する必要があります。

●戸建住宅の売却益に対する3,000万円特別控除

戸建住宅を売却した時に発生した譲渡益が、一定の要件を満たすことで最高3,000万円まで所得から控除できる制度です。つまり、売却で得た利益が3,000万円以内なら、所得税が課されません。

●戸建住宅の売却における買換え特例

買換え特例は所得税の控除ではなく、課税の「繰り延べ」です。戸建住宅を売却し、新たに戸建住宅を購入した際の支払いに売却代金を充てると、充当した金額分の売却益が無かったものと見做され、課税されません。ただし、新たに購入した戸建住宅を売却した時には譲渡益全額に対して課税されます。

●3,000万円特別控除と買換え特例の選択

戸建住宅の譲渡益が3,000万円以下であれば、3,000万円特別控除を利用することで税金を支払わずに済みます。ただ、戸建住宅の譲渡益が3,000万円を超え、新たに購入した戸建住宅が売却金額より低い場合は、どちらの制度を利用すべきなのかを比較検討する必要が出ます。

例えば、20年ほど前に父親から相続した戸建住宅を5,000万円で売却しました。かなり古い住宅のために取得費が分からなかったことから、法律の規定によって売却価格の5%である250万円が取得費とされました。その他、不動産業者の仲介料などで150万円の費用がかかりました。そして、新しい戸建住宅の購入価格は4,000万円でした。

このケースで、3,000万円特別控除と買換え特例のどちらを選択した方がお得なのかは、以下の数字を見れば分かります。

1.3,000万円特別控除を適用した場合

戸建住宅を売却した譲渡益は4,600万円です[5,000万円−(250万円+150万円]。従って、特別控除を適用すると、1,600万円(4,600万円−3,000万円)が所得税の課税対象になります。

住宅を10年超所有しているため、「10年超所有軽減税率の特例」が適用され、譲渡所得が6,000万円以下の場合の税率は14.21%(所得税10.21%・住民税4%)です。従って、所得税額は2,273,600円になります(1,600万円×14.21%)。

2.買換え特例を適用した場合

売却価格よりも低い価格の住宅に買い換えた場合に買換え特例を使うと、売却価格と買換えた住宅の価格の差額が収入と見做されます。従って、収入から取得費用を差引いた金額が所得として課税されます。

・収入金額:売却金額-新規購入金額
5,000万円-4,000万円=1,000万円

・取得費用:(売却した戸建住宅の取得費+売却費用)×(収入金額÷売却金額)
(250万円+150万円)×(1,000万円÷5,000万円)=80万円

・譲渡所得:収入金額-取得費用
1,000万円-80万円=920万円

・所得税額:譲渡所得×税率14.21%
920万円×14.21%=1,307,200円

3,000万円特別控除の税額は2,273,600で、買換え特例の税額は1,307,200です。従って買換え特例を選択した方がお得です。ただし、新規住宅における譲渡益は将来売却した時に引き継がれます。

●まとめ

戸建住宅の売買における税額は高額になるケースが多いため、将来的な生活設計を考慮したうえで、特例措置を検討することが大切です。