居住していた戸建住宅を売却することがありますが、当然自身で買主を見つけることはできないため、仲介業者に依頼することになります。一般的には交渉の手間がかからず、売主への報告義務のある「専任媒介契約」を結びます。売主(依頼者)は当然、できるだけ早く買主を見つけてもらうことを願っています。ところが、仲介業者の中には売主の意思を無視するかのように、情報を隠す「囲い込み」という操作をすることがあります。
●囲い込みとは
囲い込みとはその名の通り、売却物件を他業社に売られないように自社内にしまい込むことです。他社から物件に対する照会があっても、色々な理由をつけて販促ができないようにします。そのようなことをする理由は、仲介料を独占したいからです。
仲介料というのは、買主を見つけて売買契約が結ばれると受取れる報酬のことです。その仲介料は売主だけではなく、買主にも適用されます。つまり、買主を他業者に見つけられてしまうと、買主からの仲介料を取れなくなり、依頼された売主の仲介料しか稼げません。そこで、自社で買主を見つけ、売主と買主の両方から仲介料を取れる「両取り」を目指します。そのために、囲い込みが行われます。
仲介業者は売主に対する報告時にも当然、『まだ、買主が見つかっていない状況です』と伝えます。
●レインズの規定
宅建業界では、専任媒介の契約を結んだ仲介業者は委託された物件を「レインズ」に登録することが義務付けられています。レインズとは、全不動産業者が所有する物件情報を公開するためのネットワークであり、国土交通省の指導の下、不動産流通機構という公益法人が運営しています。物件情報を広く全業者に知らせることで情報の共有を図り、よりスムーズに売買がきるようにすることを目的としています。
当然、レインズでは囲い込みが禁止されていますが、仲介料の両取り自体が宅建業法で認められていることから、罰則規定が明確に定められていません。それが、囲い込みの無くならない一つの要因でもあります。
●売主によるレインズの確認
一般市民にはレインズの登録情報は開示されていませんが、売却を依頼した売主はレインズにログインして、自身の物件情報のみ閲覧ができます。自身の物件の取引状況の項目は契約が完了するまで「公開中」のはずです。それが、「書面による購入申込みあり」や「売主都合で一時紹介停止中」とされていた場合は、囲い込みの可能性があります。
●悪徳業者の二重囲い込み
実は、仲介業者の中には悪質な業者がおり、「二重囲い込み」を狙うことがあります。仲介業者は売主に対して購入依頼が無いと報告し続けます。そして、時期を見て売主に買取(下取り)業者を紹介し、売主の希望価格より大幅に安い価格で売却を成立させます。これで、仲介業者は売主と買取業者から仲介料の両取りができます。
さらに、仲介業者は買取業者が購入した物件の再販売の専任媒介契約をとりつけます。そして、再販売でも囲い込みを行うため、二重の囲い込みになります。その後、自社で買主を見つければ、買取業者と買主から仲介料を取れるため、結果的に仲介料が4倍になります。
●囲い込みを防止するための業者の選択
不動産業者は規模の大小に関わらず、専任媒介契約の場合は囲い込みの行われる可能性があります。売主にとって、仲介業者の囲い込みは百害あって一利なしです。
従って、専任媒介契約を結ぶ場合は、地元で実績のある業者に依頼した方が得策です。地元業者の場合は、地元で悪い噂が立つと事業に影響するため、あくどいことをすることはほぼありません。
●まとめ
戸建住宅の売却は素人の一般市民にできることではありません。従って、専門の業者に依頼することになりますが、高額な取引を任せっきりにするのは賢明ではありません。レインズを確認したり、自分から報告を求めたりするなど、自分でできることは自分でするという意識が必要です。
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