戸建住宅の買取で必須なのが速やかな登記、二重売却詐欺に注意!

戸建住宅の買取は一生に一度あるかないかと言えるほどの大きな買い物です。なお、スーパーや家電量販店などでのショッピングの場合は、お金を支払えばすぐにその商品が自分の所有物になりますが、戸建住宅の場合はそんな簡単にはいきません。対外的に自分の所有物であることを証明しなければならず、その手段となるのが「登記」です。

●戸建住宅の買取における二重売却の詐欺

不動産業界には残念ながら悪徳業者が存在しないわけではなく、戸建住宅の売却においても、詐欺をしかける業者が少なくありません。詐欺の被害の例として顕著に見られるのが、戸建住宅の買主が「二重売却」に遭うケースです。例えば、以下のようなことがあります。

不動産業者の甲社は所有する戸建住宅を4,000万円でAさんに売却し、内金としてAさんから1,000万円を受取りました。ところが、所有権の移転登記を済ませる前に、Bさんからその戸建住宅を『5,000万円で購入したい』との要望を受けたため、Bさんに売却してさっさと移転登記も済ませてしまいました。

甲社→4000万でAさんへ売却→Aさん

Aさん→1000万を内金で甲社に支払う→甲社

Aさんの所有権の移転登記を済ませる前に

甲社→5000万でBさんへ売却→Bさん

Bさんの移転登記を済ませてしまう

甲社は6000万のお金を手に入れたことになる。

●戸建住宅を二重売却された場合の権利関係

このケースで問題になるのは、AさんとBさんにおける所有権の権利関係です。民法の規定では、Aさんは以下の立場にあります。

1.甲社に対する債務の履行請求

Aさんと甲社の間では売買契約が成立しているため、甲社はAさんに対して当該戸建住宅を引渡し、移転登記を行う債務を負います。しかしながら、甲社はすでにBさんへ当該戸建住宅の移転登記を済ませているため、Aさんへの戸建住宅の引渡し債務は履行不能の状態にあります。

従って、Aさんは甲社に対して、債務不履行による損害賠償を請求できます。つまり、買取った戸建住宅と同等の戸建住宅を引渡すように請求できます。または、売買契約を解除して内金の1,000万円の返還と、買取時に負担した費用及び入居のために要した費用の全額の支払いを請求できます。

2.Bさんに対する所有権の主張

民法では、戸建住宅の所有権に関して、登記をしないと第三者に対抗できないことを第177条で定めています。
『不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。』

つまり、Aさんは甲社に対して当該住宅の所有権を主張できても、第三者であるBさんに対して所有権を主張することはできないということです。代金の支払いの有無も関係ありません。

仮に、BさんがAさんの買取を知っていた上で、当該戸建住宅を買取ったとします。この場合、Bさんは法律上の「悪意者(事実を知っている者)」になりますが、それでもAさんはBさんに所有権を主張できません。単なる悪意者は、民法177条のいう「第三者」に該当するとされているからです。

ただし、BさんがAさんを騙したり、強迫したりして登記した場合はBさんは「背信的悪意者」になるため、Aさんの所有権が認められます。Bさんの所有権を認めることは、民法の原則である「公序良俗」に反するからです。

公示の原則

このように、登記を優先することを「公示の原則」と言いますが、この理念は不動産の取引の安全性と円滑性を最優先するからです。登記に記載されていることが後から無効とされたのでは、買主は安心して取引ができません。つまり、不動産の流通が根底から成立しなくなり、経済活動が破綻することになります。

●まとめ

民法には「私的自治の原則」があり、個人は自由に契約関係を形成でき、法律の制約を受けません。従って、二重の取引自体が無効にされることはありません。ただし、民法には「過失責任の原則」があり、当時者に故意または過失がある場合は、その損害の賠償責任を負います。