不動産の売買では通常は、専門の不動産会社と交渉することになります。そして、売買の打ち合わせは必ず「宅地建物取引士(宅建士)」が担当します。その宅建士は国家資格であり、以前は「宅地建物取引主任者」という名称でしたが、2015年の宅建業法の改正によって現在の名称に変更されました。
●不動産業者に必要な宅建士の資格保有者
不動産業を営む場合は1つの事務所において、業務従事者数の5分の1以上の割合で、専任の宅建士を設置することが義務付けられています。なお、5分の1の人数がいれば良いだけのため、全員が宅建士でなくても不動産の営業をすることは可能です。
ただし、不動産取引の実務を行う上では宅建士の免許は必要不可欠です。「不動産取引」とは、宅地や建物の売買、賃貸物件や売買物件の仲介・代理業務のことです。
●宅建士の資格保有者しかできない不動産売買の実務
以下の3つの業務は、宅建士にしかできません。
1.重要事項の説明
法令上の規定や取引条件などの重要事項の説明は、高度な知識や正確な調査能力を必要とします。従って、取引相手に重要事項を説明する業務は、専門的な知識を持つ宅建士だけが行えると定められています。
2.重要事項説明書(35条書面)への記名・押印
宅建士が重要事項に関することに対して十分な調査を行い、正確な説明を行った後は、その責任を明確にするため、宅建士自らが記名・押印しなければなりません。
3.契約書(37条書面)への記名・押印
契約内容を確認し、その事実に誤りがないことを証明するため、宅建士が記名・押印することになります。
●不動産売買のできる宅建士の資格取得方法
宅建士の資格は、国家試験である宅地建物取引士試験に合格すると得られます。宅建試験は民法や宅建業法、建築関係の法令、税金など、非常に幅広い範囲から出題されるため、例年合格者が受験者の15%程度と、かなりの難関になっています。
国家試験に合格したら、受験地の都道府県知事に登録を申請し、宅地建物取引士証の交付を受けます。ただし、登録を申請するには、過去10年以内に2年以上の実務経験を積んでいなければならず、実務経験が2年に満たない場合は、登録実務講習を受講することが必要です。
登録実務講習において約1ヶ月の通信講座、及び2日間の演習(スクーリング)を受け、最終日の修了試験に合格することが条件です。
●不動産売買のできる宅建士の資格の有効期間
宅地建物取引士証の有効期間は5年です。従って、5年ごとに法定講習を受講し、資格許を更新しなければなりません。資格証を更新しないで、宅建士としての業務を行うと処分の対象になります。ただし、資格証の更新は任意であるため、宅建士としての業務を行う予定がないならば、あえて更新する必要はありません。
なお、宅地建物取引士証を更新しなくても、宅建士としての資格自体は生涯有効です。従って、改めて宅建士の業務を再開するようになった場合は、資格証の更新の手続きをするだけで良く、再度国家試験を受ける必要はありません。
●不動産売買において重要な宅建士の資格の確認
一般市民にとって、不動産の売買をすることは生涯の内で一度か二度しかないため、知識を持っていません。従って、不動産業者を信頼して話を進めるしかありません。
そこで、重要になるのが担当者が宅建士の資格を所有しているかどうかの確認です。宅建士は消費者の利益保護と適性な不動産取引を行うように、宅建業法で厳しく義務付けられています。不動産売買では宅建士とのみ交渉する意識が大切です。
●まとめ
不動産売買の交渉のできるのは宅建士の資格を所有している人だけです。宅建士であれば、法律に則った適正な取引条件を提示してきます。逆に、どんなに条件の良い話をしてきたとしても、宅建士の資格を持たない不動産業者の話には乗らない方が賢明です。
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